起業支援について
先日、第一生命保険が「大人になったらなりたい職業ランキング」を発表していました。ニュースでご覧になった方も多いと思いますが、男の子の1位は15年ぶりに学者・博士。女の子の1位は食べ物屋さんと言う結果になったそうです。
ランキングの結果を見ると、子供にも関わりのある専門職(医師や看護師、警察官、料理人、保育士)や販売系の仕事(食べ物屋さん、ペット屋さん)、それから毎日テレビで見るような華やかな仕事(野球選手や歌手)が多くランクインしています。
このランキングに、「社長」や「経営者」が、かつてランクインしたことがあるかどうか気になって遡って調べてみたのですが、1989年の公表以来、一度もないということが分かりました。
どれだけ日本で開業されているか、近年はおよそ4~5%で推移しているというデータがあります。それに対し、日本政府が掲げる目標は欧米並みの10%。大きく乖離しているのは、日本人の持つイメージの起業に対するハードルの高さが原因かもしれません。
2016年に日本政策金融公庫が実施した調査では、起業に関心があっても起業しない理由について、「自己資金が不足している」と答えた人が約6割もいると発表しています。 具体的には、「生活の不安定化、収入の減少」、「開業資金の不足」といった経済的要因。それぞれの要因を解消するための行われている施策や実際に起業された方のデータを何点かご紹介いたします。
創業時に切っても切り離せない資金調達ですが、自己資金が少なかったり、借り入れに必要な担保が用意できなかったりと、そもそも創業の土俵に乗ることが出来ず、諦めている場合もあるのでは、と先の調査では結果が出ています。
先日のコラム「創業の際の資金調達や助成金について」でも触れておりますが、最もポピュラーな資金調達の方法「日本政策金融公庫」の借り入れでは、このようなハードルをなくすため、「新創業融資制度」を設け、起業家を応援しています。
参考)https://bizcircle.jp/blog/17624.html/
政府系の金融機関であり、個人事業や中小企業の中小企業のサポートが目的ですので、創業時の融資が比較的通り安く、要件も他に比べて緩やかです。個人事業主であっても、法人であっても、事業目的であれば創業前でも融資を受けることができます。
◇主な内容
・無担保融資
・無保証人融資
もし法人で代表者が保証人になる場合は、利率が0.1%低減されます。
・自己資金が創業資金の10分の1あれば申込できる
要件を満たせば、自己資金がなくとも自己資金要件を満たしたことになることもあります。一例で言うと、現在勤めている企業と同業種を始める方で、現在の企業に6年以上の勤務実績がある人などです。
このくらいのキャリアがある方が、創業されるということも多いでしょうから、当てはまる方も多いのではないかと思います。
◇地方自治体の制度融資
東京都では、都内の事業者向けに「東京都中小企業制度融資」を実施しています。運転資金や設備資金を融資してもらう創業融資ももちろんありますが、平成29年度より、経営の安定化のためのサポート制度も新設しました。
・「ビジネスチャンス・ナビ2020」=中小企業の受注獲得を後押しするマッチングポータルサイト(https://www.sekai2020.tokyo/bcn業種・規模を問わず無料で登録できる)に登録することで、新規ビジネスパートナーの開拓をすることができます。
・中小企業の受注拡大に向けての資金、もしくは受注後の対応資金の融資を受けることができます。(ビジネスチャンス・ナビ2020に登録されていることが条件)
・「経営支援特例」の中小企業が東京商工会議所や東京信用保証協会などの経営支援のもと、自ら改善計画を策定した場合、東京都から保証料補助の優遇が受けられます。 起業の際の経済的な不安要素として「生活の不安定化」を理由に挙げる人も多くいますが、経営の安定化を促し、事業の拡大、安定を図るという点での支援です。
上記の調査の中で、こんなデータも見つけました。興味深いのでグラフを転載いたします。
参照元)日本政策金融公庫総合研究所「起業と企業意識に関する調査」
「事業は軌道に乗っているか」の質問に対して、「乗っている」と答えた割合は35.9%。「起業費用を希望通り調達できた」という人ほど、軌道に乗っていると答えています。逆に起業費用の調達が希望通りではなかった人は、軌道に乗っていると答える人が少ない傾向がありました。
また別データでは、収入に関する満足度も出ています。全額自己資金で起業した人の中で、収入に満足している人は、23.6%。対して、自己資金以外も含めて起業した人の中で、収入に満足している人は、32.5%と10%近く異なります。希望通り調達できた人ほど、収入に満足しており、不満足だった人ほど収入に不満を持っていることが分かります。
このデータから見ても分かるように、やはり創業当時、資金をどのようにどの程度用意するかというのが、その後の経営にも大きく関わることが分かるデータだと思います。 重要なのは、情報収集と出来る限りの自己資金の用意、そして明確・堅実な事業計画のようです。