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外国人起業家に1年間の在留資格

 

◆外国人起業家も多くご利用いただいています

 

当社のレンタルオフィスは、多くの外国人起業家の方にもご契約いただいております。以前は、中国国籍の方が多かったのですが、インドやパキスタンの方など、他国の方のお問合せも増えてきました。

先日、中国から来日され、日本で会社を作り、現在5年目を迎えるご利用者様とお話する機会がありました。自分の国籍とは違う国でビジネスを起ち上げ、さらに継続していく。穏やかな人柄の奥にある大きな覚悟や努力を知り、とても感銘を受けました。

今回は、外国籍の方が日本で会社を作るための必要な手続きや、外国人起業家向けの新しい情報にも触れていきたいと思います。

 

◆経営管理ビザの取得について

 

そもそも、外国籍の方が日本で会社を作り、経営していくためには、「経営管理ビザ」の取得が必要です。経営管理ビザは2014年まで投資経営ビザと呼ばれていました。

日本でこのビザを取得するためにはいくつかの要件が必要となっています。

一つ目は、事業を営むための「事業所として使用する施設」が日本に確保されていることです。これは、独立して、安定的に継続的に事業が行えることが求められます。日本人が起業した場合、経営者の自宅住所と事務所の住所が同一という場合も多く見られますが、在留資格取得のためには、より厳しい条件で事務所としての実態が必要となります。使用目的が「事業用」「店舗用」など、事業目的であることが、賃貸借契約書上において明示されていなければならないので、「居住用」としての自宅は「事業所として使用する施設」とすることが出来ません。これからビジネスを始めようとする外国人の方が、普通の賃貸事務所を借りようとすると、信用面や費用面でとてもハードルが高く、簡単に借りられるところはおそらくないでしょう。そこで、レンタルオフィスを選択されるケースも多いようです。私がお話を伺った利用者様は、会社設立の手続きを任せた行政書士の方より、レンタルオフィスのご提案をされて知ったとのことです。

二つ目は、この事業が、経営者以外に、日本に居住する常勤の職員が2名以上従事して営まれる規模のものであることとされています。もし、この要件が満たせない場合でも、500万円以上の資本金の会社を設立することで同等の規模であると認められます。この500万円の資本金はビザの更新時にも回収されることなく確保されている必要があります。

日本では資本金1円であっても株式会社の設立が可能です。しかしながら、外国人が出資する場合には、この会社法の適用はありません。信用度の高い継続的に事業を営むことができる法人にビザを発行したいため、このようなガイドラインを設けています。

もちろん、ビザは取得して終わりでなく、在留期間は、3ヶ月、4ヶ月、1年、3年、5年の5種類ありますが、当初の期間は1年間で発行されることが多いようです。更新のためには、経営する会社の財務状況が大きく関わり、この他にも経営者の経歴や在留状況(経営者が長期間にわたり日本を不在にしていないかなど)、総合的に判断されます。

 

◆外国人起業家が日本にもたらす影響

 

外国人起業家のビザ取得の要件は、初めて日本に訪れる人にとってはハードルが高いと感じるかもしれませんが、これらの要件を緩和する動きがあります。

現在、東京や福岡市では、先述の2要件を満たさなくとも、創業活動目的で6か月間、の在留資格を認めています。この2年間の利用件数は東京、福岡を合わせて30件程ということですが、そもそも6か月間の準備期間では短いという要望が多かったそうです。確かに、来日して事務所を借りたり、口座を開いたり、銀行との融資のやり取りをしたり、創業にかかる準備期間としては6か月間というのは短すぎるような気がしますね。

そこで、経済産業省と法務省は、外国人起業家が創業に関わる諸手続きが1年間で完了できる見通しを示すことが出来れば、「創業準備ビザ」を発行し、全国どこでも在留を1年間許可する方針で進めており、18年度にも開始される見込みです。福岡市では「スタートアップカフェ」という起業支援施設があり、外国人起業家にも相談窓口を広げ、創業準備のサポートを行っているそうです。今後は、このような活動が地方自治体に広がる可能性があり、熱心な地方自治体を国が支援する仕組みも作っていく方針のようです。

日本は今後、少子高齢化が進み、人口は2050年には総人口が1億人を割るとも言われています。そのため、働き方改革でも言われていることですが、「生産性の向上」は日本の喫緊の課題です。外国人起業家が日本で創業し、定着して、さらに新しい雇用も生み出す好循環をもたらすかもしれません。日本は起業文化が乏しいと言われていますが、こういった背景や働き方に関する考え方が、日本の価値観と溶け合い、新しい文化が生まれるかもしれませんね。

海外旅行ですら数える程しかしたことがなく、街中で観光客の方に話しかけられても、YesかNoくらいしか言えない私ですが、今後の動向に注目していきたいと思っています。